
概要
- 延べ面積 :96.05㎡(29.05坪)
- 部屋数 :3LDK
- 玄関 :北入り
- 間口(幅):12.74m
- 奥行(縦):9.1m
- 収納率 :14.00%
プランポイント
「平屋に住みたい。でも、独立洗面もファミリークローゼットもランドリールームもパントリーも諦めたくない」
家づくりの打ち合わせで、そんな”欲張りな要望”を口にして、営業さんに苦笑いされた経験はありませんか。しかし実は、要望そのものが多すぎるのではありません。なぜなら、要素同士のつながり(動線)を考えずに並べようとするから面積が足りなくなるだけ、というケースがほとんどだからです。
そこで今回ご紹介するのは、29.05坪というコンパクトな床面積に、いま人気の要素をぎゅっと詰め込んだ平屋3LDKの間取りです。ポイントは、単に要素を並べたのではなく「家事がまわる」ように配置へ徹底的にこだわったこと。この記事では、なぜこの配置なのか、そしてどんな暮らしが実現するのか、設計の意図までじっくり解説します。
洗う→干す→しまうが数歩で完結。洗濯動線の”神配置”
この間取りのいちばんの見せ場が、北西にまとめた水まわりゾーンです。具体的には、脱衣室(2帖)のすぐ隣にランドリールーム(3帖)、そしてその先にファミリークローク(3帖)が並びます。つまり、「脱ぐ→洗う→干す→しまう」という洗濯の一連の流れが、廊下を歩き回ることなく数歩の移動だけで完結するのです。
しかも、ランドリールームには室内干しスペースをしっかり確保しています。そのため、天気や花粉、PM2.5、共働きで帰宅が遅い日でも洗濯のペースを崩されません。乾いた服はハンガーのまま隣のファミリークロークへ移すだけ。その結果、「畳んで各部屋に配って回る」という、洗濯でいちばんおっくうな工程がほぼ消えるんです。
考えてみると、洗濯は1日1〜2回、年間にすれば500回以上発生する家事です。たとえば1回あたり5分の短縮でも、年間で40時間以上になります。つまり毎日発生する家事だからこそ、この数歩の差が10年、20年で大きな余裕の差になるのです。
さらに、洗面所を脱衣室から独立させているのも大切なポイントです。おかげで、誰かがお風呂に入っていても気兼ねなく洗面台が使えます。したがって、朝の身支度が重なる時間帯もストレスがありません。とりわけ、年頃のお子さんがいるご家庭では効いてくる間取りの工夫です。
買い物帰りは玄関→シュークロ→パントリー→キッチンへ一直線
続いて、もうひとつの主役が「帰宅動線」です。玄関横のシューズクローク(2帖)を抜けると、そのままパントリー(2帖)、そしてキッチンへつながります。つまり、重い買い物袋を抱えたままリビングを横切って、ソファの脇をすり抜けて……という生活とはお別れです。
たとえば、コートや上着、子どもの外遊びグッズはシュークロに置きます。同じように、買ってきた食材や日用品のストック、箱買いした飲料はパントリーへ。要するに、通り道でどんどん置いていくだけです。その結果、手ぶらでキッチンに立てるので、帰宅後すぐ夕食の支度に取りかかれます。
加えて、この動線には副次効果もあります。なぜなら、リビングに買い物袋や段ボール、上着が持ち込まれないため、LDKが「散らかる入口」から切り離されるからです。つまり、急な来客にも慌てない家は、収納の量よりも「モノが通る道」の設計で決まるということです。
寝室は南北に分離。生活時間のズレを音で悩まない
ところで、平屋の弱点としてよく挙げられるのが「音」の問題です。2階建てなら階で寝室を分けられます。しかし平屋では全室がワンフロアに並ぶため、寝室同士が近いと生活音が気になりがちです。
そこでこの間取りでは、主寝室(6.8帖)を北側、子ども部屋になる洋室(4.5帖×2)を南側に配置し、寝室ゾーンを南北にきっぱり分離しました。さらに、間にはホールと収納を挟んでいます。おかげで収納がちょうど防音材の役割も果たし、就寝時間がズレても互いの音が届きにくい構成です。
たとえば、子どもが夜更かしする年頃になっても、あるいは早起きの親が朝支度でゴソゴソしても、お互いに気を使わずに済みます。結局のところ、家族仲は「ほどよい距離感」が守ってくれるものだったりします。
北道路の敷地を最大限に活かす配置
実はこの間取り、「北道路」という敷地条件を逆手に取った計画です。
一般的に、北道路の土地は「日当たりが悪そう」と敬遠されがちで、南道路より価格が抑えめな傾向があります。しかし設計次第で、むしろ南道路より快適になることも珍しくありません。
理由はこうです。北道路の敷地では、道路側(北)に玄関やアプローチを取る分、南面をまるごと居住スペースに使えます。そこで、浴室・脱衣室・ランドリールーム・トイレ・各収納といった、大きな窓を必要としない水まわりと収納をすべて北側に寄せました。
その結果、貴重な南面はLDK18帖と居室で贅沢に使い切りです。さらに、LDKの南にはデッキが続き、大開口から一日を通してたっぷりの光が注ぎます。しかも南道路と違って、リビングの窓の先にあるのは道路や通行人の視線ではなく、自分の家の庭。つまり、カーテンを開けたまま暮らせるリビングは、北道路だからこそ手に入る贅沢なのです。
また、デッキ越しに芝生の庭へと視線が抜けるため、18帖という数字以上の広がりを感じられます。加えて、天井を勾配天井にしてシーリングファンを回せば、平屋ならではの開放感も存分に味わえます。
平屋でもトイレは2ヶ所
「平屋だからトイレは1ヶ所でいいかな」と迷う方は多いはずです。しかしこの家では、あえて2ヶ所確保しました。1つは洗面所側、もう1つは寝室ゾーン側です。
おかげで、家族4人が同じ時間帯に動く朝でも、トイレの争奪戦はこの家では起きません。さらに、寝室側のトイレは夜中や体調不良のときに使いやすい位置にあるため、将来の暮らしやすさという意味でも安心です。また、来客時には洗面所側を案内すれば、プライベートゾーンに人を通さずに済むのもさりげない気配りポイント。ちなみに、トイレ1ヶ所分の増設コストはおよそ50〜80万円が目安です。とはいえ、毎朝のストレスと老後の安心を考えれば、平屋こそ投資価値の高い選択だと考えています。
収納率は約14%。「しまう場所」から逆算した収納計画
ところで、住宅の収納計画では、延床面積に対する収納面積の割合「収納率」が10〜15%あると暮らしやすいと言われます。この間取りの場合、ファミリークローク3帖、パントリー2帖、シューズクローク2帖に各居室の収納を合わせて、収納率はおよそ12%。つまり、29坪のコンパクトな平屋としては十分な水準です。
ただし、大切なのは量よりも配置です。この家の収納はすべて「モノが発生する場所・使う場所のすぐそば」にあります。たとえば、衣類は洗濯動線の終点に、食品ストックは帰宅動線の途中に、靴と外物は玄関に。要するに、しまう場所への移動距離がゼロに近いから、片付けが「ついで」で終わるのです。結局のところ、散らからない家の正体は、収納の広さではなく収納の位置なのです。
この間取りが向いているのはこんな家族
まず、共働きで家事にかけられる時間を1分でも短くしたいご夫婦におすすめです。また、子どもが小さいうちはLDKと庭でのびのび過ごさせて、成長したら南側の洋室2部屋を子ども部屋に使えます。さらに、子どもが独立したあとは、洋室を趣味室や客間に転用できます。そのうえ、段差のないワンフロアで暮らしが完結する平屋は、老後まで見据えた終の棲家としても安心です。
一方で、居室数は3LDKです。したがって、お子さんが3人以上のご家庭や、在宅ワーク用の完全個室が必須の方は、洋室の使い方を早めに整理しておくとよいでしょう。
まとめ:要素の数ではなく、つながりで間取りは決まる
今回は、29坪という現実的なサイズ感の中で、独立洗面・ファミリークローク・ランドリールーム・パントリー・シューズクローク・トイレ2ヶ所を”ぜんぶ載せ”した間取りをご紹介しました。しかも、洗濯動線と帰宅動線という2本の軸で全体を貫いているのが特徴です。
人気設備をリストアップするだけなら誰にでもできます。しかし、差がつくのは、それらを「どの順番で、どうつなぐか」です。ですから間取り検討中の方は、要望リストの隣に「その部屋で誰が何をして、次にどこへ動くか」を書き出してみてください。そうすれば、きっと優先順位が見えてきます。
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