

概要
- 延べ面積 :111.79㎡(33.81坪)
- 部屋数 :3LDK
- 玄関 :南入り
- 間口(幅):12.74m
- 奥行(縦):11.83m
- 収納率 :10.17%
プランポイント
そもそも、旗竿地はなぜ敬遠されるのか
旗竿地が避けられがちな理由は、だいたい次の3つに集約されます。
① 日当たり・風通しへの不安
四方を建物に囲まれるケースが多く、光が入らないイメージがある。
② 駐車のしにくさ
細長い竿部分に車を停めるため、縦列駐車になりやすい。
③ 閉塞感
奥まっていて、なんとなく暗い・狭いという印象がある。
いずれも「そのまま普通に建てたら」現実になり得る問題です。裏を返せば、設計でこの3つを潰せれば、旗竿地は価格以上の価値を持つ土地になるということでもあります。
この間取りが出した答え
① 道路から離れているから、「囲っても暗くならない庭」ができる
このプランの核心は、南東側に確保したプライベートガーデンです。
一般的な整形地では、庭を目隠しフェンスで囲うと圧迫感が出ます。道路や隣家との距離が近いぶん、フェンスが「壁」として迫ってくるからです。
ところが旗竿地は、そもそも道路から敷地が離れている。視線の発生源との距離が最初から確保されているので、低めの横格子フェンスでも十分に視線が切れます。結果として、閉じているのに空は広く抜ける庭になります。
さらに平屋であることも効いています。建物が低いぶん、庭に落ちる自陰が小さく、光が回りやすい。「旗竿地=暗い」の常識は、平屋と庭の配置でひっくり返せます。
② 6帖の土間リビングが、庭と部屋の”あいだ”をつくる
LDK20帖の南東側に、6帖の土間リビングを配置しています。
床仕上げはタイル。大開口サッシで庭と直接つながり、掃き出して外に出られる構成です。建具で仕切らずLDKと一体化しているので、開け放てば実質26帖の大空間になります。
土間リビングの使い方は、住まい手次第で無限に広がります。
- 朝、コーヒーを持ち込んで庭を眺める
- 雨の日、子どもを室内で遊ばせる
- 自転車やキャンプ道具を土足のまま持ち込んでメンテナンスする
- ベビーカーやペットのスペースにする
- 来客時、玄関から近いのでそのまま応接に使う
「部屋」と「外」のどちらでもある中間領域は、日本の住宅が長く持っていた縁側の現代的な解釈とも言えます。
③ 段差が、そのまま家具になる
土間リビングとLDKのフローリングの間には段差があります。
この段差、単なる仕上げの切り替えではありません。腰掛けられる高さに設定することで、そのままベンチとして機能します。
庭を眺めながら座る。来客と気軽に腰かけて話す。子どもが靴を履くときに座る。造作ベンチを別途つくらなくても、構成そのものが家具の役割を果たしている、無駄のない設計です。
④ 玄関 → シューズクローク → 土間リビングの「裏動線」
玄関横に2.2帖のシューズクロークを設け、そこから土間リビングへ抜けられる動線が確保されています。
これは地味ですが、暮らしへの効きがとても大きいポイントです。
汚れた靴、濡れた傘、砂のついたアウトドア用品、土のついた園芸道具──こうしたものを フローリングを一度も踏まずに土間まで運べる。玄関がいつでも片付いた状態を保てるうえ、掃除の手間も減ります。
来客動線(玄関 → ホール → LDK)と、家族の帰宅動線(玄関 → SC → 土間)が分離されている点も、来客の多いご家庭には効いてきます。
日々の家事がラクになる、水回りの設計
見た目の華やかさだけでなく、この間取りは家事動線もきちんと組まれています。
洗う → 干す → しまうが数歩で完結
3帖の脱衣室に洗濯機と室内干しスペースを集約し、その隣に2帖のファミリークロークを配置。洗濯にまつわる一連の作業が、ほぼ移動ゼロで終わります。
洗濯物を抱えて家中を歩き回る、という平屋にありがちな消耗がありません。
洗面を廊下側に独立させた理由
洗面台は脱衣室から切り離し、廊下側に造作カウンターとして独立配置しています。
この分離には、はっきりした3つのメリットがあります。
- 家族の誰かが入浴中でも、洗面が使える(朝の身支度の渋滞が起きない)
- 来客に洗面を貸すとき、脱衣室を通らせずに済む(下着や洗濯物を見られない)
- 脱衣室を「洗濯室」として独立させられる(生活感を閉じ込められる)
平屋は水回りが一箇所に集まりやすいぶん、この分離の効果が特に大きく出ます。
トイレ2ヶ所という判断
玄関そばと、寝室ゾーン側の2ヶ所にトイレを設けています。
延床34坪の平屋でトイレを2つ置くのは、面積的には決して安い判断ではありません。それでも入れる価値があるのは、平屋は横に長いため、寝室から水回りまでの距離が伸びやすいからです。夜中に廊下を端から端まで歩く必要がなくなります。来客用と家族用を分けられる点も含め、暮らしはじめてから効いてくる投資です。
中央の廊下が生む、平屋のゾーニング
平屋の設計で最も難しいのが、パブリックとプライベートの分け方です。すべてが同じフロアにあるぶん、油断すると来客からベッドが見えてしまいます。
このプランは、中央に配置した廊下を境界線として使っています。
- 北・西側:主寝室、洋室2室、書斎(プライベートゾーン)
- 東・南側:LDK、土間リビング、玄関(パブリックゾーン)
- 北東角:脱衣室、浴室、ファミリークローク(サービスゾーン)
玄関から入った来客はホールを経てLDKに向かうため、寝室ゾーンの前を一切通りません。 廊下は単なる通路ではなく、ゾーンを切り分けるための装置として働いています。
壁一面が棚の、3帖の書斎
プランの西端に、3帖の独立した書斎があります。
造作デスクと、天井近くまで届く壁面の可動棚。3帖という数字から想像するよりもはるかに収納量があり、本や資料、趣味の道具をしっかり収められます。
配置も考え抜かれています。LDKから最も遠い位置にあるため、リビングの生活音が届きにくい。 在宅ワークのオンライン会議にも、集中したい趣味の時間にも使えます。
窓は小さめの高い位置に設けられており、外からの視線を気にせず座っていられるのもポイントです。
検討するなら、ここは確認を
旗竿地×土間リビングという構成は魅力的ですが、実際に建てる際に確認しておきたい点もあります。
土間の断熱
土間コンクリートは熱容量が大きいため、基礎断熱をきちんと施工しないと冬に足元が冷えます。 LDKと一体で使う土間リビングは特に、床下断熱ではなく基礎断熱+土間下の断熱材が前提になります。断熱等級・UA値と併せて、必ず確認しておきたいところです。
大開口の日射コントロール
南東向きの大開口は冬の日射取得に有利ですが、夏は暑さの原因にもなります。庇の出、軒の深さ、あるいは外付けブラインドやシェードでの日射遮蔽をセットで検討してください。
竿部分の幅と駐車
竿部分に2台の縦列駐車という計画です。日常的に2台を頻繁に出し入れするご家庭では、奥の車を出す際に手前を動かす必要が出ます。誰がどの車をいつ使うのか、生活シミュレーションをしておくと安心です。
収納率
このプランの収納率は約10%。一般的な目安である10〜15%の下限にあたります。土間リビングやシューズクロークが実質的な収納として機能するため実用上は問題になりにくいですが、荷物の多いご家庭であれば、小屋裏収納の追加なども検討の余地があります。
こんな方に向いています
- 土地の予算を抑えつつ、庭のある暮らしをあきらめたくない方
- カーテンを開けたまま暮らしたい方
- キャンプ、自転車、DIYなど「外で使う道具」が多い方
- 在宅ワークで、独立した書斎がほしい方
- 平屋で暮らしたいが、生活感を来客に見せたくない方
まとめ:旗竿地は、静けさを買える土地
旗竿地の本質的な価値は、価格の安さではありません。
道路から離れているという、お金では買い直せない距離。 車の音が届かない、通行人の視線が入らない、その静けさこそが旗竿地の本当の資産です。
今回の間取りは、その距離を守るべきものとして扱い、庭を囲い、土間で室内に引き込みました。細い通路を抜けた先に、外界から切り離された自分たちだけの時間が流れている──旗竿地でしか成立しない、贅沢な平屋の形です。
土地探しで旗竿地を前にして迷っている方は、価格ではなく「その奥に何がつくれるか」で判断してみてください。見え方が変わってくるはずです。
※延床面積・収納率は図面からの概算値です。実際の数値は各社の設計図書をご確認ください。
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